White Paper No.2

『ターンテーブルシートがレコードのセパレーションに与える影響について』

ターンテーブルシート(AMTS-03)とレコードスタビライザー(AMDS-01)は、LPレコードにとって最良の再生環境を生むためのものです。しかし、その構造上、レコード中心に向かいわずかな傾斜(1.5度)を有しており、この傾斜に寄るレコード再生上のチャンネル セパレーションの劣化を気にされる方もおられる様です。
そこで、今回は、ターンテーブルシートの1.5度の傾斜がどの程度チャンネルセパレーションに影響するかの考察と実験を行いました。

1.ターンテーブルシート/レコードスタビライザーの構造

ターンテーブルシートは、下記の様な1.5度傾斜した構造です。

LPレコードは、レコードスタビライザーの重量によりターンテーブルシートに密着し、等価的にLPレコードの重量がターンテーブルシートとターンテーブル自体が足され合わされた重量になると考えます。これによりカートリッジの再生が安定します。

2.LPレコードの音溝

LPレコードは、L/R両チャンネルの音楽信号が1本の音溝に刻まれています。これは、音溝の左斜面にLチャンネルを、右斜面にRチャンネルを記録しており、左右の斜面の関係は、90度となっています。このためカートリッジで音溝の信号を振動として取り出した時、それぞれのチャンネルの信号が独立して振動として取り出す事ができます。

この図は、LPレコードが水平に置かれ、カートリッジが正常に接触した場合です。
L/R両チャンネルの音溝の振動は、カートリッジによってL/Rチャンネルの振動ベクトルとなり、その先に有るコイル (MCカートリッジ)やマグネット(MMカートリッジ)を駆動し電気信号に変換します。(この図では、カンチレバー等を省略して描いています。)
実際のカートリッジの振動から電気への変換機構は完全ではありませんので、チャンネルセパレーションが、20dBから30dB程度のものが多いようです。
さて、ここで本題のターンテーブルシートとレコードスタビライザーを使用した場合、LPレコード面は、カートリッジに対し1.5度傾いた形になります。その結果、誰もがチャンネルセパレーションは、どの程度悪くなるだろうか?と思われると思います。そこでこれを考察してみましょう。

3.ターンテーブルシートとレコードスタビライザー使用時


この図は、LPレコードが、ターンテーブルシートに寄り1.5度傾き、カートリッジが垂直に接触した状態です。
実はよく見て頂くと、L/R両チャンネルの青の音溝の振動が、赤のそれぞれの振動ベクトルと完全に一致していないのが判ります。
この部分を拡大したのが、下記の図です。

LPレコードの1.5度の傾きによって音溝の振動がカートリッジの振動ベクトルに対し、1.5度ずれているのが判ります。これにより、Lチャンネルの信号がRチャンネルに漏れ込む、また、Rチャンネルの信号がLチャンネルに漏れ込むのが判ります。
この漏れ込んだ信号の大きさは、ちょうどSin(1.5度) = 0.02618 = -31.64dB になります。これがチャンネルセパレーションの限界値となる事が判ります。

4.ターンテーブルシートの有無/レコードスタビライザーの有無でのチャンネルセパレーションの実験

実験の条件:

日時 場所:2026年5月22日 アムトランス 試聴室
使用プレーヤー:Garrard 401型
テストレコード:LONDON SLC 1107 STEREOPHONIC FREQUENCY TEST RECORD
カートリッジ:DENON DL-103、Ortofon 70 周年記念モデル

実験方法:

テストレコードで、1kHzの信号がL チャンネルのみ、及び、Rチャンネルのみ記録されたトラックをカートリッジで再生する。
カートリッジ出力は、
→ イコライザ―アンプを通る。
→ プリアンプに入る。
→ プリアンプ出力を、オシロスコープのCh1及びCh2に接続。
→ オシロスコープの時間軸波形を、FFTにより周波数軸のスペクトラムに変換する。(この時、スペクトラムの32回の平均化を行い、測定の再現性の向上を行う。)
→ 周波数軸上でL/R各チャンネルの1kHzの信号のスペクトラム強度を自動測定する。
→ この差がチャンネル セパレーションとなる。
→ この作業をターンテーブルシートの有無、レコードスタビライザーの有無の状態でチャンネルセパレーションを測定する。

実験結果:


実験結果は、DL-103とOrtofon 70では少々異なった結果が得られました。
DL-103 では、ターンテーブルシート、レコードスタビライザー共に使用しない時 (OFF OFF)と比べ、少し不思議なのですが、どちらも使用した時(ON ON)の方がチャンネルセパレーションが0.6~0.9dB程良く出ています。
Ortofon 70では、(OFF OFF) → (OFF ON) → (ON ON)に行くにしたがって、チャンネルセパレーションが、徐々に下がって行きます。その差は0.6dB~0.9dB程度です。
総論としては、どちらのカートリッジも標準状態(OFF OFF)で24~25dBのチャンネルセパレーションで、ターンテーブルシートと、レコードスタビライザーを使用した状態(ON ON)でも24~26dBのチャンネルセパレーションが得られました。
この結果から観ると、ターンテーブルシートを使用したことに寄る論理的なチャンネルセパレーションの限界値 31.6dBは、少なくとも今回使用した一般的なMCカートリッジのチャンネル セパレーションの限界以下になっていると言う事のようです。

アムトランスからのお知らせ

今回使用したカートリッジでも他の周波数(低い周波数)では良いチャンネルセパレーションが得られるかもしれません。またチャンネルセパレーションがもっと良いカートリッジも有るかと思います。そのような方がターンテーブルシートとレコードスタビライザーに満足し、安心してご使用いただけるように、アムトランスでは、ターンテーブルシートとレコードスタビライザーのお客様に、カートリッジのシェルを1.5度水平からずらしたものを準備中です。アムトランス社のウェブサイトでお知らせいたします。